電気学会における継続教育事業の実施について

1.背景と目的
 平成12年4月に技術士法が改正され,技術士に一層の職業倫理を備えることが求められると同時に,技術士資質の向上を図るために,技術士資格取得後も3年間に150時間単位(実時間×重みファクタ)の継続教育(CPD:Continuing Professional Development)を受けることが望まれている。この継続教育の具体的実施に関しては,日本技術士会を初め関連機関など多方面から学協会に対して対応への協力要請がなされている。

 また,我が国のバブル崩壊後の企業のリストラクチャリングに伴う「技術者の流動性化」や,国際的なエンジニアの資格相互認証への動きに合わせた技術者に対する「能力開発」に関する認識が高まってきたことから,日本工学会の名の下に「日本PDE協議会」の設置が認められるなど,学協会におけるこれら「継続教育」システム構築が急務の課題となりつつある。

 平成13年度から「土木学会」や「化学工学会」では、それぞれ「土木学会技術推進機構」や「ケミカルエンジニア人材育成センター」を開設し、継続教育制度をスタートした他,ほとんどの学会では「継続教育の内容」「実施体制」「評価方法」などについて,教育システムの構築を目指して検討中である。

 電気学会においては,将来は、運営予算・実績面も管理するような人材育成センターを開設し、電気学会独自の認定制度として認定証を発行することも検討するが、取り敢えず、他学会の進捗状況も考慮しながら,学会の事業として下記のような内容で,技術者の資質向上のための継続教育の場を提供する。電気工学に関連する分野の技術者としては、3年間に150時間単位(実時間×重みファクタ)の継続教育を受けることが望ましい。
2.対象者
 この継続教育の対象者は,電気工学に関連する分野の技術者とする。なお,継続教育の受講者については電気学会会員に限定することなく会員以外にも公開するが,電気学会会員に対しては受講料の割引制度を設けるなどして,会員サービスの一助とする。
3.継続教育の種類と内容
 電気学会が実施する継続教育の形態は、差し当たり、「電気学会が関与する継続教育」の範囲に限定し,次のように取り決める。
  1. 形態 電気学会が実施する継続教育の形態は,次の2種類とする。
    参加学習型: 講習会,講演会,研究会,全国大会,部門大会,シンポジウムなど,電気学会が主催・共催(同格共催)する各種公開技術会合への参加
    情報提供型: 上記各種会合における研究発表,部門誌への論文発表,各種調査専門委員会・技術委員会などへの参加
     
  2. 講習会 特に講習会については,次の二種類のものを設ける。
    基礎講座: 例えば,電気学会で発行している大学講座を利用するなどして複数講座を設け,定期的に同一内容で開催するもの。
    専門講座: 専門委員会が作成する特定分野の技術に関する調査報告(技術報告)を利用した講習会を初め,講演会,研究会,全国大会,部門大会,シンポジウムなど,各種公開技術会合がこれにあたる。
     
    備考: 継続教育の種類は差し当たり、電気学会が責任を持って継続教育受講の実態を把握でき,さらに他機関(例えば技術士会など)に対してその証明ができる範囲にとどめるべきであると考え,上記のような内容とした。
    将来は、インターネットを利用した継続教育も導入する必要があるであろう。
4.継続教育分野と内容
 電気学会が実施する継続教育分野としては,「一般共通分野」「専門技術分野」とし,教育内容は次のようなものとする。
教育分野 記号 教育内容
一般共通分野 倫 理 倫理規定、技術倫理など
環 境 地球環境、環境アセスメント、環境課題の解決方法など
安 全 安全基準、防災基準、危機管理、化学物質の毒性、製造物責任法(PL法)など
技術動向 新技術、品質保証、情報技術、規格・仕様など
社会動向 国内・海外動向,商務協定並びに技術に対するニーズなど
産業経済動向 内外の産業経済動向、労働市場動向など
規格・基準の動向 ISO、IECなど
マネージメント手法 工程管理、コスト管理、資源管理、維持管理、品質管理、リスク管理など
契 約 役務契約、国際的な契約形態など
国際交流 英語によるプレゼンテーション・コミュニケーション、国際社会の理解、各国の文化及び歴史
その他            教養(科学技術史)、一般社会との関わりなど
専門技術分野 電気基礎 電気・電子物性、電気回路、電気・電子材料、計測技術、制御とシステム、電子デバイス、電子回路、センサとマイクロマシン、高電圧と大電流など
電気機器 電線およびケーブル,回転機一般および特殊電動機,直流機,交流機,リニアモータと磁気浮上,変圧器,リアクトル,コンデンサ,電力開閉装置と避雷装置,保護リレーと監視制御装置,パワーエレクトロニクス,ドライブシステム,超電導および超電導機器など
電力 エネルギーと電気,電力系統,水力発電,火力発電,原子力発電,送電,変電,配電,エネルギー新技術など
情報・通信 計算機システム,情報処理ハードウェア,情報処理ソフトウェア,通信とネットワーク,システム開発とソフトウェア生産技術,情報システムと監視制御システムなど
電気応用 交通,産業ドライブシステム,産業エレクトロニクス,電気加熱,電気化学,電池,照明,家庭電器,静電気,医用電子、超音波、電気探査と磁気探査、放射線など
電気共通 電磁環境、リサイクル、ライフサイクル評価(LCA),地球環境、電気関係の規格と法規、電気安全、耐震工学、生産工学、電気技術史など
周辺技術 機械システム、材料力学、熱力学、流体力学、精密加工、メカトロニクス、金属材料、無機・有機材料、資源、建築、土木、農学など
  専門技術分野は、2001年発行電気工学ハンドブックの分類に準じています。
5.教育形態とCPD単位
 電気学会が実施する各種継続教育事業についてのCPD単位は次の通りとする。基準は講習会に1時間参加する場合を1CPD単位として、他の教育形態では、これと比較して時間重み係数を掛けるなどして、CPD単位を決める。

  教育形態 番号 内 容 時間重み係数 CPD単位
I 講習会,講演会,研究会,全国大会,部門大会,シンポジウムなどへの参加 1 左記の講習会などへの参加 1
II 論文発表 2 全国大会,部門大会での論文発表   2(1論文)
3 研究会,シンポジウムなどでの論文発表   3(1論文)
4 査読付き論文発表(例えば,部門誌への論文発表)   40(1論文)
5 査読なし論文発表   10(1論文)
6 解説記事などの執筆(例えば,学会誌,部門誌などの解説記事執筆)   10(1件)
7 技術図書の執筆 3または原稿用紙1枚に付き1 3または枚数(1件あたり最大40)
III 各種会合への参加 8 技術委員会・調査専門委員会などの委員長,幹事,幹事補佐 2 2H
9 技術委員会・調査専門委員会などの委員 1
  表中のHは時間を表す。
 
 連名者(共著者)の取り扱いについて : 連名者(共著者)も、貢献度に応じてこれに準じる。 
このCPD単位に対する考え方は,将来日本PDE協議会等の統一された機関で,統一的な考え方が取り決められた場合は変更される場合がある。 

 将来、電気学会独自の認定制度として認定証を発行する場合には、他の学協会等との整合性をはかるため、以下のようなものも付け加える。(学会独自の認定制度の基準は、現在、「日本PDE協議会」で検討の準備を始めたところである。)

V 企業内研修及びOJT 10 企業内研修プログラム受講 1 H
11 OJTプログラム受講(年間最大20時間まで) 1
VI 技術指導 12 大学、学術団体などの講師  3 3H
13 社内研修会などの講師 2 2H
VII 業務経験 14 受賞など特に成果を上げた業務   20
15 特許取得(発明者に限る)   40
VIII 公的な技術資格の取得 16 政府機関等の認定あるいは承認する公的な技術資格の取得   20(1資格当たり)

e-mail:jimkyoku@iee.or.jp
更新日 2003年4月8日
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