「『ワンダーアイランド』は海に浮かぶ小さな無人島です。ここに新しい街をつくろうと新任の市長は考えました。街をつくるためには電気が必要です。市長は「電気の素」を何にしようか悩んでいます。市長の街づくりの構想を受けて,市長秘書は「電気の素」を調査し,現在の日本のエネルギー事情と,新エネルギーの全体像をレポートします。つづいてセールスパーソンたちが登場し,「風力発電」,「太陽光発電」,「燃料電池発電」,「廃棄物発電」を取り上げて,発電のしくみや,実際に現在どのように使われているか,そして,ワンダーアイランドでの「電気の素」にふさわしいかどうかなどをプレゼンテーションし,市長と秘書に売り込みをかけます。プレゼンテーションのあと,市長と秘書はセールスパーソンたちに素朴な疑問を投げかけますが,案外鋭い問いかけだったりします。セールスパーソンどおしで論じ合うことで,それぞれの長所短所も明らかになります。
【登場人物】
ワンダーアイランドの市長 中島 達人(東京電力)
秘書 熊田亜紀子(東京大学)
相談役 茅 陽一(慶応義塾大学)
風力発電のセールスマン 高本 学(日立製作所)
太陽光発電のセールスウーマン 高橋 玲子(東 芝)
燃料電池発電のセールスウーマン 小柳 文子(成蹊大学)
廃棄物発電のセールスマン 浅田 規(富士電機総合研究所)
みなさん,こんにちは。本日は「第4回エネルギーワンダーランド」にお越しいただき,誠にありがとうございます。「エネルギーワンダーランド」は電気学会のサイエンスボランティア活動の一環として,電気やエネルギーなど電気学会の研究領域について,お子さんから主婦のみなさんをはじめ,広く多くのみなさんに知っていただくことを目的に開催してまいりました。
本日のテーマは「考えてみよう!『電気の素(もと)』いろいろ』です。電気は私たちの生活に無くてはならないものです。電気はどうやってつくられているか知っていますか? 火力,水力,原子力…といろいろな発電所があります。最近では太陽光や風力など,新しい発電が始まっています。本日はみんなで「電気の素」について考えてみましょう!それではさっそく始めましょう!
まず最初のプログラムは「ワンダーアイランド」の「電気の素」を考える「パネル討論」です。「ワンダーアイランド」は海に浮かぶ人工の小さな無人島です。ここに新しい街を作ろうと新任の市長さんは考えました。街を作るためには電気が必要です。市長さんはこの島の「電気の素」を何にしようか悩んでおります。みなさんも一緒に考えてください。それでは市長さんと秘書さんに登場していただきましょう。
【市長】
みなさん,こんにちは!私は「ワンダーアイランド」というこの人工の小さな島の市長です。この島に今から新しい街を作ろうとしています。街には電気が必要ですが,新しいエネルギーを電気の素として積極的に活用した島づくりが私の方針です。電気の素にはなにやらいろいろあるようなのですが,あたらしいもの好きの私としては,ぜひとも新技術を導入したい。ですがじつは私もまだ勉強を始めたばかり。秘書に調べさせてあるので聞いてみることにしましょう。オーイ,秘書のひしさーん!
【秘書】
ハーイ!市長,お呼びですか?
【市長】
あのね,前に言っていた電気の素ね,もう調べてありますか?
【秘書】
ハイ!バッチリです!少し難しくなりますが,市長,しっかり聞いて下さいね!
【秘書】
まず,電気の素には,原子力,火力,水力の他に,新エネルギーがあります。
これは日本の発電電力量の内訳をあらわしたものですが,10年後の2010年には総電力量も伸びますし,その割合もこのように変わるだろうと予想されています。この新エネルギーは市長の島づくり方針にぴったりですね。新エネルギーは,新しいからということだけではなく,いろいろな意味で注目されています。
【秘書】
電気の素には,そのエネルギーを安定して社会に供給できるかどうか,またその社会が経済成長を続けられるかどうか,環境に与える影響の大きさ,の3つに気を配る必要があります。火力発電の原料の石油や原子力発電の燃料のウランは限りのある資源で,これからもずーっと使い続けることは難しいですし,化石燃料消費に伴う温暖化問題など環境問題が深刻化してきました。そこで,新エネルギーと呼ばれる新しいエネルギー源に,これらの問題が解決できないかと期待が深まっているのです。
【秘書】
これは電気を生み出す際に排出されてしまう二酸化炭素の量をグラフにしたものです。環境に与える影響を考えると,この値が小さければ小さいほどいいんですけど,このように太陽光,風力,地熱といった新エネルギーは,ちょっとしか二酸化炭素を出さないので,環境にやさしいですね。
【秘書】
この新しいエネルギーは,太陽や風など無尽蔵にある自然の力を利用した「再生可能エネルギー」,今まで捨てていたエネルギーを使う「リサイクル型エネルギー」,エネルギーをより効率よく利用する「従来型エネルギーの新利用形態」などいろいろあります。いっぱいあって,目移りしてしまいますね。ワンダーアイランドにはどの電気の素がいいか,それぞれの特徴などについてちょっと調べてみました。まあお聞きください。
【秘書】
まず,地熱発電では,この絵のように火山の熱を利用して蒸気タービンを回して発電することになります。エネルギー源は,火山の熱,つまり大地の熱です。
例えば,八丈島には大きな地熱発電所があり,この図のように季節によっても変動は若干ありますが,島全体の最低電力需要分をベースとした3300キロワットを地熱発電で供給しています。地熱発電は,半永久的な地熱エネルギーを活用して,地温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出せず,さらに長い目でみれば,経済性も良いというすばらしい電気の素です。
【秘書】
さて,この地熱発電は,ワンダーアイランドには果たして導入できるかどうかというと,残念!かんじんの火山がないので無理ですね。(ただ,現在日本では,東北,九州地方を中心に18ヶ所,約53万キロワットを超える電源となり,本格的な導入段階を迎えているといえます。)
【秘書】
さて,ワンダーアイランドは海に囲まれていますから,当然海洋エネルギーの利用も良さそうですよね。地球の表面積の約7割を占める海は,膨大なエネルギー源として古くから利用が試みられてきました。その方法には,波力発電,海洋温度差発電,海流発電,潮汐発電の4種類があります。では,ワンダーアイランドには果たして導入できるかというと,それぞれ,このような条件を満足せねばならず,立地条件が合わないので利用するのは難しいと思います!
【秘書】
バイオマスエネルギーを電気の素として利用することもできます。これはどういういことかというと,まず植物には,光合成によって太陽エネルギーが蓄えられています。そしてその植物を材料に,アルコール発酵やメタン発酵を行い,燃料を取り出し,燃やして電気を作るのです。つまり,植物さえあれば,植物の光合成という機能を通じて,太陽エネルギーを取り出せるのです。
【秘書】
では,ワンダーアイランドの電気をバイオマスエネルギーで賄えるのかというと,残念ながらちょっと無理そうです。使うのにつりあう量の植物資源が必要です。残念ながら,ワンダーアイランドには,それだけの植物を育てる土地がありません。
【市長】
いろいろ調べてくれて,どうもありがとう。電気の素にはいろいろな種類があることがわかったけど,結論としては,どれもうちの島にはダメだってことかなあ。。。
【秘書】
がっかりしないでください!市長!残りは大丈夫です。結構うまくいきそうです!それで,ちゃーんと本日,セールスパーソンをお呼びしてあるんです!みなさんどーぞ!!まず,左手から風力発電のカーゼンさん,太陽発電の太さん,燃料電池のフューエルさん,廃棄物発電のゴミーゴさんです。
【市長】
ほお〜!ヒシ君はさすがに優秀!美人なだけじゃなくて,仕事も速い!!じゃあ,どなたからご説明いただこうか?うーん…。
【カーゼン】
では,私,風力から説明させていただきます。私はホンコンの商社「ウィンドパワー」の営業課長をしています「カーゼン」でございます。市長さんがお望みの,ワンダーアイランドに最適の発電システムをご提案できると確信しております。どうぞよろしくお願いします。
【カーゼン】
これは発電の原理を示したものです。風車ブレードに風があたると,ブレードはこれを回転エネルギーに変換し,発電機を回して電気をおこします。電気の素は,自然のエネルギーの風ですので,どんなに使ってもなくならないし,大気を汚しません。新しい島にはうってつけのシステムです。
【カーゼン】
ご覧のように,今では日本の各所で風車がまわっています。風車が林立したウィンドパークや,公共施設のライトアップ電源用など,従来の発電設備と一味違った風景ですよね。
【カーゼン】
当社では,すでにワンダーアイランドの環境データを実測し,建設プランを策定しております。風力発電では,発電効率が良くなるのは平均風速毎秒6メートル以上の場合です。ワンダーアイランドの場合,ご覧のようにA地区とB地区が該当しています。当社の500キロワット級風車の場合,風車ブレードの直径が40メートルですので,A地区に20基,B地区に20基合計40基の建設が可能で,その場合に供給可能な電力量は合計2万キロワットになります。一般のご家庭の消費電力は1世帯あたりで約3キロワットですので,ワンダーアイランドの予想世帯数5千家分は,風力発電だけで充分供給可能です。どうです?とっても魅力的なエネルギーでしょう!
【市長】
どうもありがとう。いや〜カーゼンさんは話上手なので,思わずそうかな!と納得してしまいそうだ。じゃあつぎは,同じく自然のエネルギーということで,太陽さんお願いします。
【太 陽子】
はい,はじめまして市長さん。私,ワンダーアイランドの電気の素としてぜひぜひ太陽をお勧めしたい,Otentoコーポレーションの太 陽子と申します。私たちの頭の上でさんさんと輝く太陽,太陽は私たちとの付き合いの長い身近なエネルギーです。そこに太陽があるかぎりエネルギーはなくなりません。私たちは今,この恵みを技術によって電気にして賢く使うことができるようになりました。
太陽光発電とは,太陽電池を使って太陽の光から電気をつくる方法です。太陽電池は2種類の性質の違うシリコンからできていて,太陽の光があたると,この2種類のシリコンの間に電気ができるようになっています。この太陽電池で作られる電気は直流電流なので,インバータを使っておうちの中で使える交流電流にしています。

【太 陽子】
それでは実際にこの太陽電池がどのように使われているかを見てみましょう。実はもうすでに市長さんの身の回りでも使われているのです。例えば,ほら,秘書さん,その電卓がそうです。町の中でもちょっと気をつけて見てみると,道路標識や街頭の上などに小さな太陽電池がついているのを見つけると思います。少しずつでも太陽の光があれば,ちゃんと発電しているのです。この太陽電池は災害の時にも力を発揮します。停電で送電が止まってしまっても,太陽の光があればその場で電気を作り出すことができてとても便利です。
また,目に見えないところでも太陽電池は一生懸命働いています。山小屋や灯台のように電気をひきにくいところにも,自家発電用の電源として使われています。まだまだ改良は必要ですが,将来はソーラーカーや宇宙で発電を行うなど,未来のエネルギーとして夢はどんどん膨らみますね。この夢のあるエネルギーは,市長さんのワンダーアイランド構想にぴったりではありませんか?
【太 陽子】
私が市長さんに提案申し上げたいのは「あなたのおうちも発電所」プランです。どれくらい発電するかをご説明しましょう。太陽の光は1平方メートルの面積に1キロワット降り注ぎます。そして,これは東京のデータなのですが,ワンダーアイランドでも同じくらいで,1ヶ月に80時間くらいの日照時間があるので,80キロワットアワーのエネルギーが1ヶ月に太陽から得られることになります。残念ながら,これをすべて電気に変えることはできません。実際にはこのうちの1割(これを発電効率と呼びます)が電気として使えるので,ひと月に8キロワットアワーの発電をすることになります。
今回は家族向けパックということで,標準的な3キロワットシステムをご提案させていただきます。これは,それぞれのおうちの屋根に30平方メートルの太陽電池をつけていただくことになるのですが,4人家族では平均して月に約300キロワットアワーの電気をお使いになるので,なんと4人家族の8割の電気がまかなえることになるのです!足りない2割分は,市庁舎の屋根や,学校の屋根にもつけることができますよ。まだまだ太陽電池の置き場所はたくさんありますね。
いつまでもなくならず,二酸化炭素を出さず,災害時にも使うことができる。なかなか優れもののエネルギーではないでしょうか!ねえ,いかがです市長さん?
【秘書】
太 陽子さんもどうもありがとうございました。「あなたのおうちも発電所」。良さそうなプランに聞こえますねえ。じゃあつぎは,燃料電池さんお願いします。
【Ms.Fuel】
はじめまして,私,MASA宇宙局の燃料電池販売Ms.Fuelと申します。私どもがこちらワンダーアイランドにぜひご提供したいのが,高効率燃料電池発電システムでございます。Mr.Mayorが「電池」と言われて思い浮かべられるのは,たぶんどこのご家庭にもあるこの「乾電池」ではないかと存じます。ところが「燃料電池」は乾電池と違って,「燃料」を送り続ける限り電気をつくりだす装置のことです。それでは簡単に原理をご説明いたしましょう!
Mr.Mayorは,中学校か小学校の理科の実験で「水の電気分解」をやったことはありませんか?水に電極を入れて「酸素」と「水素」に分解するあの実験です。燃料電池はあの「水の電気分解」の逆の原理を利用したものなのです。
燃料電池の燃料は「水素」を使います。この燃料である水素を燃料電池に送ると,電解液の中で水素が「水素イオン」と「電子」に分かれます。電子は陰極に引きつけられ,陰極から陽極へ向かって流れていきます。これが「電気」となるんですね。
一方,「水素イオン」は電解液の中で陽極に引きつけられ,すすす〜っと陽極に行くと,ここで外から送られる「酸素」,つまり「空気」と出会うんです。するとね,この「水素イオン」は酸素と反応して「お水」をつくるんです。で,この時に「熱」も発生するんです。これが「反応熱」と呼ばれるんですが,この熱を利用すれば「温水」も手に入るんです。さらに「熱交換システム」というものを利用すれば,「空調」にも利用できるんですねこれが。
【Ms.Fuel】
ねえ,すばらしいでしょう? ですから燃料電池は,NOxなどの排出ガスが出ませんので環境にやさしいし,温水もお使いになれば総合効率80%以上の大変効率の良い電気の素になります。そして何より,機械的に動く部分がございませんから,とっても静かなんです。
【Ms.Fuel】
これまでにも当宇宙局では,MASAのスペースシャトルの電源としての実績から,大型の物ではビルやホテルの地下にそぉーっと置かれて活躍しておりますし,排出ガスを出さない電気自動車として,これから続々市場を広げつつございます。Mr.Mayor!ワンダーアイランドの将来をお考えでしたら,電気の素は燃料電池以外にはございません。燃料電池をどうぞよろしく!
【市長】
Ms.Fuelもどうもありがとうございました。私には途中ちょっと難しかったけど,それはあとで質問するとして。じゃあ最後は,廃棄物発電さんお願いします。
【ゴミーゴ】
はい。それでは,廃棄物発電についてご説明いたします。私,「ゴミ電機株式会社」のゴミーゴと申します。本日は,「ゴミも立派な電気の素」だということを市長さんにご理解していただき,ワンダーアイランドへの廃棄物発電導入をご検討していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
現在,多くの廃棄物は焼却処理されています(約75%)。そのもともと焼却されているゴミの焼却熱を利用した発電が廃棄物発電でありますので,新たに環境へ負荷を与えることもありません。そんな廃棄物発電の原理についてまず簡単にご説明します。
まず,一般家庭などから回収してきたゴミをゴミピットに貯えます。そのゴミを焼却炉で燃やして,その時に発生する焼却熱を利用してボイラーで蒸気をつくり,タービンを回して発電を行います。ボイラーで発生した蒸気そのものや,熱交換器を介して発生させた温水を使用して,温水プールなどの施設で熱利用することもできます。
【ゴミーゴ】
廃棄物発電は,全国各地のゴミ焼却場の中で行われているんですよ。ゴミ焼却施設の中に発電設備が備えられているので,外観からではよく分からないかもしれませんが,焼却場の中で必要な電気の足しにしたり,電力会社へ電気を売ったりしています。
【ゴミーゴ】
ゴミは各家庭から一年中必ず出るものです。ただしワンダーアイランドのように人口の少ない地域では,ゴミ焼却場に発電設備を導入するのに見合うだけのゴミは発生しません。そこで,市長さんにご提案があります。RDFを運んできましょう。RDFとはゴミから作られた燃料です。燃やしたときの発熱量が高いので,一日に200トンを輸送すれば1万2000キロワットの電気が供給可能です。1世帯あたり約3キロワットの消費電力とすると,廃棄物発電だけでも4000世帯に電気を供給できます。どうです市長さん,ゴミも立派な電気の素になるんですよ!
【市長】
みなさんどうもおつかれさまでした。なるほどなるほど,どの電気の素も魅力的ですねえ。風力発電,太陽光発電,燃料電池発電,廃棄物発電という4つの違う電気の素を,この島で考えてみようということですね。私もそこまでは理解できました。でも,いくつかまだよくわからないところがあるので,質問してみましょう。
まず,カーゼンさんに質問したいのですが…,ワンダーアイランドのあるこの地方は,実は台風の通り道になっているのですが,強い風が吹けば吹くほどたくさん電気がつくれるんでしょうか? 突風が吹いたら風車が壊れちゃいそうで心配なんですが。それにふだんの日だって,風の強さによって風車の回る速さが変わるだろうから,つくられる電気の量も変わってしまうと思うのですけど,何か工夫されているんでしょうか?
【カーゼン】
OK,Mayor!台風についてもチャント調べてありますよ。
この図は風力発電のいろいろな制御について書いたものです。風の力を発電機の回転運動に変換して電気を起こすのですが,風車には風の速さや向きを感知する小さい風車がついていて,その条件を制御することによって一定の出力を出すことができます。また,発電機の回転数を入力して,風が強すぎる場合には回転の力を弱めるように,風車の羽根の角度を変更することもできます。
風速と電気出力の実測値がこれです。発電を開始する風速をカットイン風速といい,だいたい毎秒2.5メートルくらいから発電を始めます。500キロワットの風車の場合,定格出力に達するのは風速がだいたい毎秒12.5メートルくらいのときです。それより風が強くなっても,このような制御で一定の出力を維持します。もっと風が強くなり25メートルになると,カットオフといって出力をやめてしまいます。合理的でしょう?ご心配の台風に関しては,風速毎秒70メートルまで風車本体は耐えられます。日本の沖縄や八丈島でも実績がありますし,ワンダーアイランド仕様にも充分適用できますよ。
【カーゼン】
風車の羽根(ブレード)の角度は,ピッチ制御用モータ(6番)でブレード角度(9番)を制御しています。だから,風が強くても羽根の振動が小さく,つねに効率の良い安定した運転が可能なんです。どうです,すばらしいでしょう?
【市長】
なるほど。納得しました。風車は台風の突風にも耐えられるように設計してあるし,風の強さが変わって,風車の回転が速くなったり遅くなったりしても,つねに同じだけの電気がつくられるように,ちゃんとコントロールされているのですね。それを聞いて安心しました。
【秘書】
太 陽子さんに質問したいのですけど,「あなたのおうちも発電所」のプランだと,一軒一軒のおうちの屋根に太陽電池を取り付けるのですよね?修理や交換やお掃除が大変なんじゃないですか?ときどきは自分で屋根に上ってお掃除しなくちゃならないのでしょうか?私,高いところは苦手なんですけど。。。それに,太陽電池って,
とても重そうに見えるのですけど,家が傷んだりしないんでしょうか?
【太 陽子】
はい,それでは秘書さんのご質問にお答えしましょう。わかりやすくお答えしますよ。
まず1つ目のご質問,たしかにご自分で管理なさるのはたいへんですよね。でもご安心ください。おうちの管理をするのと同じようにしていただければ大丈夫です。太陽電池はこのように傾斜のついた設計になっておりますので,たいていの汚れは雨で流れ落ちてしまいます。それに,(風力発電のように)動く部分がまったくありませんし,それに取り替えが必要な消耗部分がまったくないのです。しくみはとても簡単ですし,20年はらくらく持ちます。決してお客さまが屋根から滑り落ちるようなことはありませんし,私たちセールスパーソンが,のちのちまでちゃんとサポートしますのでご安心を。ただあんまりよく発電するので,ちょっくら上ってみてみようとするお客さまがときどきいらっしゃるのは,責任は負いかねるですが。
2つめのご質問ですが,重そうに見える太陽電池,実はそれほど重くはありません。重さは1平方メートルでも10キロから20キロくらいです。ここに見本を持ってきたのですが,こんなに軽いのですよ。軽量化はどんどん進んでいますし,この私たちの自信作を見てください。屋根材や瓦と一緒になった太陽電池も開発されていて,より軽く,見栄え良くなっています。ご近所で目立ってしまうなんてご心配も不要ですし,このデザインならつけてみたいという奥様の声もよく聞こえるのですよ。もちろんおうちを補強しなくても大丈夫です。
【市長】
私は昔から化学は苦手なので,やさ〜しく教えて下さい。燃料電池というのは,しくみだけ聞くと,化学反応で電気ができるものであれば,材料はな〜んでもよさそうに思えてしまうのですが,きっとそういうわけでもないんでしょう?実際にはどんな種類の電池があって,そのうちどれが実用まで進んでいるんでしょうか?
【Ms.Fuel】
はい!分かりました。それではご説明申し上げます。現在最も開発が進んでおりますのが,リン酸型,溶融炭酸塩型,固体電解質型,そして,固体高分子型燃料電池といえますでしょう。
リン酸型燃料電池は素材にカーボンを使用し,電解質には高濃度のリン酸を使用しております。どちらの素材も大変身近なものですから,量産化が可能で,価格の低減化が期待されています。
一方,固体高分子型燃料電池は,リン酸型と同じようにカーボン素材を使用しておりますが,電解質にプロトン導電性高分子膜を使用しております。これは構造がシンプルで運転温度も低いため,小型化ができるというメリットがあります。
いずれの燃料電池も水素のほか,メタノール,LPG,天然ガス,臭素ガス,そして,ちょっと臭いのを我慢いただければ,先ほど秘書のヒシさんのご説明にもありました「バイオマス」もご利用になれますよ。
【Ms.Fuel】
そして,こちらがそれぞれの燃料電池の特徴をまとめたものでございます。運転温度も,効率も違ってまいりますが,最も実績を上げているのは,リン酸型燃料電池でございます。これは,五井火力発電所というところの国内最大1万1000キロワットの装置をはじめとして,国内外で多数導入されていて,最近では新しいビルの地下などに積極的に導入されております。また,固体高分子型では電気自動車の量産化も始まりました。手のひらサイズでご家庭のTVを見ることができるものや,カセットコンロ用のガスボンベで6時間くらい発電できる装置も開発されております。ですから,災害時にも強〜い味方になるんでございますの。
【市長】
どうもありがとうございました。ちょっとだけわかった気がします。でもやっぱり難しかった。燃料電池は主に4種類があるのですね。リン酸型,溶融炭酸塩型,固体電解質型,そしてえ〜と,固体高分子型。名前だけでも覚えなくては。手のひらサイズの電池なんて使い道に夢がありますね!ヒシくんは,ちゃんと理解できたのかな?
【秘書】
大丈夫ですよ。市長は難しかったようですけど,あとでこっそり教えてあげますから。今度は私からゴミーゴさんに質問なのですけど,廃棄物発電の現状についてもう少し詳しく教えていただけますか?燃料としてRDFというのを使うということだったのですけど,実際どんなものなのか,あまりイメージがわきません。つくり方やすぐれた点も説明していただけますか?
【ゴミーゴ】
それではまず,廃棄物発電の現状についてご説明いたします。全国にゴミ焼却場は約1900ヶございます。そのうち,発電設備を備えているのは約180ヶ所です。発電容量は約80万キロワットですが,2010年には500万キロワットの導入目標が定められています。発電効率は10〜15%程度でやや低いのですが,ガスタービンリパワリング複合発電(約30%)や,RDF発電(約25%)などの高効率廃棄物発電の技術も進んできています。
【ゴミーゴ】
RDFについては,まずこのビデオを見て下さい。
RDFとは廃棄物固形燃料のことです。「燃えるゴミ」から燃えないものなどを取り除いて砕き,添加物を加えて圧縮して固形燃料をつくります。
これが実物です(とRDFを市長と秘書に手渡す)。RDFは腐らない,悪臭がでない,輸送や貯蔵ができるなどの特徴をもっています。RDFはゴミからつくられたものですが,それはまさにゴミではなく燃料なのです。
【秘書】
RDFって,ゴミからできているのに,くんくん臭いをかいでも全然臭くないし,不思議なものですねえ。とってもよくわかりました。
市長!電気の素のいろいろな話を聞いてみると,風力も良さそうですし,ゴミも避けて通れない問題のようだし,太陽だってとっても身近なエネルギー源だし…。
【Ms.Fuel】
あ,あの〜…,燃料電池は…?あの〜,カーゼンさんのお話を伺っておりますと,確かにスケールが大きくてなんだかとっても夢一杯に聞こえますけど,でも,実際は違うんじゃございません?大きな風車がブンブン回ったらずいぶんとうるさいんじゃございません?もし,近くに住宅地があれば,うるさい!って文句がまいりますよ!その点,私ども燃料電池はたいそう静かで問題がございませんし,場所だって住宅やビルの地下に置くことが可能でございますでしょう?
【カーゼン】
燃料サンも結構きついとこついてきますね。(もっと優しい方かと思ったのに!) 市長さんご安心ください。この図は当社の225キロワット機の騒音の実測データです。風車の羽根のところの中心では95デシベルなんですけど,真下の地表面では45デシベルになりますし,250メートル離れた場所では34デシベルにまで低下します。自動車の騒音の方が大きいレベルです。夜になるとちょっと気になるレベルですが,風車が建設される地帯は海岸沿いが多いので,風の音の方がよっぽど大きいですよ。当社では今でも低騒音化の努力を重ねていて,例えば翼の形状工夫とか,多極発電機採用によるギア音の廃止とか,いろいろな工夫を重ねています。これからは絶対風力ですよ,Ms.Fuel!
ところで,ゴミーゴさん。風力も確かに風まかせみたいなとこあるけど,ゴミだっていつも同じゴミが同じ量出るわけじゃないし,燃えないゴミもあるし,結構大変なんじゃないですか?
【ゴミーゴ】
はい,ゴミの発熱量が高いほど発電量は増大します。ごみの質は収集のしかた(分別するか混合か)や地域,季節によっても違います。この図は大阪市,東京都,札幌市,横浜市のごみの発熱量ですが,このように場所によって異なります。一般に,都市のほうが農村よりもゴミの発熱量が高い傾向にあるようです。焼却施設の計画にはゴミの質についての調査と分析が必要です。ワンダーアイランドへは,発熱量の安定しているRDFを輸送いたしますので,心配しないで下さい。一年中安定した電気を供給いたします。
ところで,太 陽子さん。太陽光発電では,晴れたり曇ったり雨が降ったりすると,つくられる電気の量が変わってしまうでしょうけれど大丈夫なんですか?夜も電気がつくれないでしょうし。廃棄物なら一年中電気をつくることができるのに。
【太 陽子】
うーん,それを言われると,ゴミーゴさん。さっきまではアミーゴ!だわって思っていたのに。でも,太陽子,逃げも隠れもいたしません。ちょっとこの図を見ていただけますか?この図の丸い部分は,晴れの日に太陽電池で作り出すことができる電気の量を表しています。そして,この段々の部分は,実際にご家庭で使う電気の量を表しています。確かにお昼は完全にまかなうことができるのですが,夜になってしまうと,まったく発電できなくなってしまうのですよね。使いたいときに使えるだけ発電ができないのは,これはたしかに弱みなんです。それに曇りの日や雨の日は日照量が晴れの日の半分になるので,つくられる電気の量はそれにつれて半分になってしまいますねえ。まあ,そういった時は他の電気の素さんに頼るとしまして。
でもねえ,考えてもみてください。これだけの電気の素がいつもみなさんの頭の上で輝いているというのに,もったいない話ではないですか。太陽光は必ずしも安定な電気の素とはいえません。でも,太陽は照っている間は誰でも使えますし,一度屋根に取り付けてしまえば,どんどん勝手に発電してくれるのですから,大事に使えば使うだけお得になりますね。それにお得といえば,燃料代はまったくかからないのです。太陽や風力のような自然エネルギー以外のエネルギーは,燃料代がかかってしまいますよね?そういえば燃料電池さん,燃料って名前がつくくらいだから,燃料代はかかってしまうのですよね!
【Ms.Fuel】
あらら,太 陽子さん。それは言いっこなしじゃないんですか?(言わないで!って,さっきお約束したのに…)でも,Mr.Mayor,ご安心下さい。政府はただいま補助金政策を行っておりますし,もう少し量産化体制が整えば,1キロワットあたり10万円くらいには価格を抑えられる予定でございます。
そうしますと,私どもの試算例では,こちらのワンダーアイランドが4000世帯ですから,燃料電池は1万2000キロワットの規模となります。燃料電池に必要な燃料は,どこのお宅でも使われる都市ガス13Aでよろしいですね?普通のご家庭で4人家族の1所帯あたり,電気・ガスの両方で,ひと月およそ1万1210円のエネルギー料金がかかると言われています。でも,もし燃料電池を導入いたしますと,ご家庭の給湯も燃料電池からになりますし,熱交換システムを導入なされば,空調分もこちらからいたしますので,その分経費がお安くなります。結局,なんと全島民で燃料電池の設備を負担なさったとしても,月々1万1030円となりまして,180円の黒字になるんでございます。いかがですぅ〜?太陽さんも導入をお考えになりませんかあ?
【市長】
うーん!いままでの説明を聞いてきて,どれも電気の素として使えそうなことが良〜くわかってきました。でも,私は新しもの好きなだけではなく,欲張りでもあるのです。電気を使えるようにするだけではなく,何か,この島のためになるようなこともできないかな?みんなが喜んでこの島にやって来たり,たくさんの人たちに住んでもらうようにしたいものです。何か良いアイデアはないかな?
【カーゼン】
OK!待ってましたよ,そのお言葉。何をかくそう,当「ウィンドパワー」社は土地開発もやっているんですよ。今回ご提案のA地区は将来都市化が予想されるこれらの地域とはすこし離れていますが,都市部とリニアモーターカーで接続して,この地区を一大アミューズメントパークにしてはいかがですか!風車は観光の目玉にもなるし,パークのライトアップや施設の電力も供給できるし一石二鳥ですよ。It’s dreaming ワンダーアイランド!これで決まりですね!
【太 陽子】
エネルギーワンダーアイランドは参加型エコアイランド!をめざしましょう!これを市長さん,このプランを自信をもっておすすめしたいです。
こちらに登場いただいたのは,私どものお客さまである,サンダーアイランドにお住まいの雷さんなのですが,こちらの方からは,実際に発電を身の周りでやってみることで,電気の大切さがわかってくるとのご意見をいただいたことがあります。太陽で発電している様子をみていると,もったいなくってお家の中の電気をぱちぱち消してまわってしまうなんてこともあるそうです。こんな思わぬ省エネ運動ができてしまうなんてメリットもありますね。エネルギーワンダーアイランドの住民は,自分で使う電気を自分たちで作っています。きっとこんなエコロジーな島に住みたい,って方が続々といらっしゃいますよ,島に引っ越してきたい方が続出でしょう。
それに太陽の利用できるエネルギーは,光だけではありません。熱だって利用できるのです。太陽熱をうまく使いこなせば,今日みたいな寒い日だってお家の中はポカポカ,それに温かいお湯まで使えて,ますます効率よくエネルギーを使うことができるのです。会場のお客様からも,この島に住みたい!って声が聞こえてきませんか?
エネルギーワンダーアイランド丸ごと,エコロジーな島になること請け合いです。
【ゴミーゴ】
ワンダーアイランドにも当然ごみの焼却場は必要でしょう。その時は,ぜひ発電設備も導入してください。さらに,焼却場に隣接して,大規模な文化・福祉・スポーツ施設「エコランド」を建設しましょう。もちろん,施設の電気の素は「ごみ」です。熱も温水プールや福祉施設のお風呂などに有効利用しましょう。それが実現した時,ワンダーアイランドはお年寄りや環境にやさしい島,他の模範となる島になることでしょう。ぜひ私どもにそのお手伝いをさせてください。夢のあるワンダーアイランドばんざーい!!
【Ms.Fuel】
ご覧下さい!これが私どもMASAのご提案する「夢の低公害アイランド構想」でございます。工業,商業地区にはエネルギーセンターを置きまして,大型のシステムから電気と給湯を集中的に行うのでございます。ゆ〜〜ったりとした郊外の住宅地には,家庭ごとの個別の燃料電池システムを取り付け,給湯、空調も行います。そして何より,都市交通の目玉として,燃料電池電気自動車などのガス非排出車,つまり電気自動車をワンダーアイランドに導入するのでございます!
電線のないすばらしい景観と,排出ガスのない美味しい空気,無駄のないエネルギー供給システム!必ずやみなさんがおみえになりますよ!!
【市長】
いままでの説明を聞いてきて,新しい電気の素には,風力発電,太陽光発電,燃料電池発電,廃棄物発電などいろいろあることがわかりました。それぞれ良いいところもあるし,私たちが投げかけた質問や,セールスパーソンのみなさんどおしのやりとりでわかったように,それぞれ問題点もあるようです。秘書やセールスパーソンたちの話を聞いて,新しい電気の素について勉強にはなったけれど,ワンダーアイランドでどうやって電気をつくればいいか,簡単には決められそうにもなさそうです。さてさてどうしたものか,ますます悩んでしまいました。。。
【司会】
市長さんの大好きな,新しいいろいろな「電気の素」が紹介されましたが,ますます市長さんは悩んでおられますね。それではここで,ワンダーアイランドの相談役の茅 先生にご相談してみましょう。慶應義塾大学 大学院の教授でいらっしゃる茅 陽一先生は,エネルギーと環境を対象とするシステム工学のご専門家です。それでは
茅 先生よろしくお願いいたします。
(このあと,茅 先生に全体をまとめたやさしい解説をしていただきました。)
パネリストのみなさん。
パネリスト&準備にたずさわった実行委員のみなさん。