Q&A


ロ.電磁環境,電磁界測定など


この章では主として,周波数が300Hzより低い電界と磁界を対象とします。


Q1.人が電磁環境に入ると,人体に何が起きますか。

Q2.送電線と屋外配電線の周辺は電磁環境が違いますか。


Q1.人が電磁環境に入ると,人体に何が起きますか。

A1.電界と磁界の作用は別々に考えられます。
  電界は,電源の電圧が,時間的に変化する(増減する)のに対応して,人体に微小な電流を生じ
 ます。これは,静電誘導(電気力線の変化による誘導)と呼ばれます。
   磁界は,時間的に変化しない直流磁界の場合,金属のような導電性のものが動くと,電流を生じ
 ます。
  人体の場合には,血液などがこの場合に相当します。また,導電性の物質が静止していても,時
 間とともに変化する磁界は,この物質に電流を生じます。
  人体にも同様に微小な電流が誘導されますが,この電流は,外部電源による磁界の変化を妨げる
 ような磁界を生じる電流で,うずを巻くように流れるので,うず電流と呼ばれます。
  磁界によって電流を生じる現象は,一般に電磁誘導と呼びます。
   送電線や配電線の電界や磁界によって,体内に誘導される電流は,通常では感知できるものでは
 ありませんが,20Hz程度の周波数の磁界の強さを極端に強めて,10〜12mTにすると,誘
 導電流によって網膜細胞が興奮し,閃光が見えることが報告されています。周波数が60Hzにな
 ると,50mT程度の磁界で閃光が現れた実験例があります。これは磁気閃光現象と呼ばれていま
 す。
  また,電界が高くなると,体表面の産毛や頭髪が微動するために感知できるようになります。
 この値は10kV/mくらいです。


Q2.送電線と屋外配電線の周辺は電磁環境が違いますか。

A2.屋外にある配電線の電圧は100V,200Vから6.6kV,22kVがあります。線下の
 地表面における特性で比較すると,送電線の方が電圧・電流とも大きいので,電線の地上高が大き
 いにもかかわらず,送電線下の方が電界・磁界が一般に大きくなっています。
    送電線を見ると,電線の本数が多いものがありますが,その本数が多いからといって電界および
 磁界が大きくなるとは限らないことを説明します。実際の送電線や配電線の場合は各電線の電圧・
 電流は時間的にずれた波形(位相のずれた波形)となっていますので,打ち消し作用が現れます。
  送電線の場合を取り上げて具体的に説明しますと,3本の電線が1つのセットとして電気エネル
 ギーの輸送に使われますが,これら3本の電線の電圧や電流は通常,どの瞬時においても加え合わ
 せると0になっています。そのため,電圧・電流から発生する電界・磁界も色々な大きさと方向を
 もっていて打ち消し合い,電線から遠ざかるにつれてすぐに小さくなります。送電線の場合,電線
 を適切に配列すると,電線の本数が多くても,かえって電界・磁界が小さくなることがあります。


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