Q&A


ニ.規制,情報


Q1.海外での電磁界に関する規制にはどのようなものがありますか。

Q2.ICNIRPの指針の内容はどのようなものですか。


Q1.海外での電磁界に関する規制にはどのようなものがありますか。

A1.海外諸国での商用周波電磁界に関する規制の実状はさまざまです。
  法的に強制力のある規制が行われている国はドイツです。連邦排出影響防止法に基づき,その第
 26号政令として1997年1月から商用周波および高周波電磁界の規制が施行されています。規
 制の指針値には国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインの内容が採用されて
 います(ICNIRPの指針値についてはA2で説明します)。
    法的に強制力のない任意指針として運用されているものは英国の例があります。英国放射線防護
 評議会(NRPB)が1993年に示した声明の数値が強制力のない指針として利用されています。
 実質的にはこの数値が大きな影響力を持っています。(50Hzでの公衆に適用される数値は電界
 強度12kV/m,磁束密度16G)。
    米国では国家安全規則で送電線下の地上にいる人体への誘導電流の規制がありますが,電界や磁
 界に直接適用される規制はありません。各州でさまざまな規制値が設けられている例があり,ドイ
 ツや英国の数値より厳しい場合もありますが,これらは人体への影響を考慮して科学的に決められ
 たのではなく,それまでの設備の実績に基づいて定めらたものです。なお,通信放送施設からの高
 周波電磁界に対しては連邦通信委員会(FCC)が米国環境政策法に基づく法的に強制力のある規
 制を行っています。
    スウェーデンでの取り組みが話題になることがありますが,スウェーデンでは防護指針値は決め
 られておらず,また規制を行う動きもありません。国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)
 の指針や,欧州連合の法規制が行われればそれに従う方向といわれています。
    国際機関では,ICNIRPがこのほど新しい防護指針を定め,1998年4月に発表しました。
 この数値についてはA2で説明します。
    欧州連合では欧州規格となる電磁界の曝露限界についての規格を検討しています。しかし,IC
 NIRPの指針値と基本的には同じ様な数値となる見込みです。


Q2.ICNIRPの指針の内容はどのようなものですか。

A2.ICNIRPは,非電離放射線からの人体防護を推進するために1992年に設立された国際
 委員会で,世界保健機関(WHO)および国際労働機関(ILO)と非電離放射線の分野での協力
 関係が公式に承認された非政府機関です。
    ICNIRP指針は,300GHz以下のすべての電磁界に適用されます。したがって,50Hz
 や60Hzの商用周波数も適用範囲に含まれます。ここでは,商用周波数に限って述べます。
   ICNIRP指針は基本制限(Basic Restrictions)と参考レベル(Reference Levels)とよば
 れる2種類の指針値から構成されます。また,それぞれの指針値は職業的に電磁界にさらされる場
 合と,公衆の場合に分けられており,公衆に対してより厳しい制限が示されています。
    商用周波を含む低周波領域での基本制限は電磁界によって人体内に誘導される電流密度の制限と
 して与えられます。商用周波では体幹部及び頭部での電流密度が10mA/m以下に制限されてい
 ます。
  しかし,人体内部の誘導電流値を知ることは困難なので,基本制限値が満たされているかどうか
 の判断は簡単ではありません。このため,いくつかの仮定をおいて,人体にどの程度の大きさの電
 界や磁界が入射すると基本制限を満たさない場合があるかを調べ,その電界,磁界の強さを「参考
 レベル」として示しています。公衆に適用される参考レベルは,50Hzでは電界強度5kV/m,
 磁界強度1Gであり,60Hzではこれらの6分の5の値です。参考レベルは身体全体が電界,磁
 界にさらされる場合を想定して導かれています。このため,身体の一部分が参考レベルを超える電
 磁界にさらされても基本制限を超えるとはいえません。家庭用電気製品などでごく狭い範囲で磁界
 が1Gを超える場合もありますが,基本制限を超えるような機器の存在は知られていません。


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