Q1.直流と交流は,どう違いますか。 A1.直流は,電圧が一定で,流れる電流も同じ方向に流れ続けます。身近な例は,1.5Vの乾電 池です。雷の雲の電圧もほぼ直流の電圧と考えられます。 これに対して,送電線や配電線の電圧,電流は,直流もありますが(直流送電)たいてい交流で す。 交流は,時間とともに(通常は正弦波状に)電圧が正から負,負から正の変化をくり返します。 このために,空間の電界も電圧の変化に応じて,大きさと向きが変わります。 交流の電流も流れる方向と大きさが,やはり時間とともに変化します。電流の変化に応じて,電 流で発生する磁界も大きさと向きが時々刻々変化します。
Q2.電界や磁界は,どうして発生するのですか。 A2.電界は,電荷から生じるものと磁界の変化から生じるものがあります。 まず,電荷から生じる電界は,導体に電圧を印加する(与える)と,導体の表面に電荷が現れ, この電荷が電気力線を発生させて空間に電界を作ります。 磁界は,電流によって発生します。電流が流れると電流の経路を取り囲むような磁界が,生じま す。(永久)磁石は,電流が流れているようには見えませんが,原子や分子のような小さい領域の 多数の電流の作用が,重ね合わさって磁界を生じているのです。 一方,磁界が(時間とともに)変化すると,変化の早さと磁界の大きさに対応した電界を発生し ます。もし,この磁界中に導体があるとその磁界の変化を妨げるような性質の電流が,導体中を流 れます。この電流を「うず電流」といいます。(ロのA1)
Q3.電界や磁界の大きさはどのように表すのですか。 A3.電圧の大きさは,V(ボルト)で表しますが,乾電池の1.5V(直流)や家庭に来ている電 気の100V(交流)などでおなじみの単位です。電界の大きさは,電圧を距離で除したV/mと いう単位で表します。 電流の大きさは,A(アンペア)で,また物体の中の電流の通り難さは,抵抗といい,Ω(オー ム)という単位で表します。電流と抵抗を掛けると電圧になります。 磁界の大きさは,A/mで表しますが,磁束密度という量を単に磁界ということが多く,T(テ スラ)という単位で表します。G(ガウス)という単位もよく用いられますが,104G(1万ガ ウス)が1Tです。
Q4.電磁界と電磁波は同じものですか。 A4.電磁界は,一般的に電界と磁界を総称して言っています。電磁波は,電界と磁界が一定の大き さを保ちつつ相伴なって空間を進む波です。 電磁波は,波の振動数(周波数)あるいは波長で分類されますが,振動数(周波数)と波長を掛 けると光の速度(3×108m/秒)になります。電磁波には,振動数の高い(波長の短い)方か ら順に,ガンマ線,X線,紫外線,可視光線,赤外線があり,さらに放送や通信に用いられる各種 の電波があります。波長が,1×105m以下(振動数が3×103Hz以上)の電磁波と主な利用 をまとめて下表に示します。 家庭に来ている電気,すなわち商用周波数(50Hzや60Hz)の電磁界も原理的には電磁波 の一種ですが,50Hzでは波長が6,000km,60Hzでは5,000kmにもなります。 従ってこのような商用周波数の電磁界(の作用)を考えるときは,電界と磁界が相伴なって進行す る波ではなく,電界と磁界を別々に(分離して)扱います。 なお商用周波数は周波数で分類すると極低周波(ELF:extremely low frequency)に属します。 ELFは,一般的には300Hz以下の範囲ですが,しばしば3kHz以下の周波数を指すことが あります。
名 称 | 波長(m)[振動数(Hz)] | おもな利用 | |
---|---|---|---|
電 波 | |||
超長波(VLF) | 1×105〜1×104[3×103〜3×104] | ||
長波 (LF) | 1×104〜1×103[3×104〜3×105] | 船舶・飛行機の通信 | |
中波 (MF) | 1×103〜1×102[3×105〜3×106] | 国内のラジオ放送 | |
短波 (HF) | 1×102〜1×10 [3×106〜3×107] | 遠距離のラジオ放送 | |
超短波(VHF) | 1×10 〜1 [3×107〜3×108] | FM放送,テレビ放送 | |
マイクロ波 | 1 〜1×10-4[3×108〜3×1012] | UHFテレビ放送,レーダ, 電話中継,携帯電話, 気象衛星 | |
赤 外 線 | 1×10-4〜7.7×10-7 | 赤外線写真,暖房乾燥 | |
可 視 光 線 | 7.7×10-7〜3.8×10-7 | 光学器械 | |
紫 外 線 | 3.8×10-7〜1×10-10 | 殺菌,化学作用の利用 | |
X 線 | 1×10-9〜1×10-12 | X線写真,医療 | |
ガ ン マ 線 | 1×10-11以下 | ガンマフィールド,厚さ計, 照射食品,医療 |
Q5.自然界の電磁界にはどんなものがありますか。 A5.自然界には次のような色々の種類の電界や磁界が存在します。 1)電界 a. 大気電界 b. 雷雲,雷放電(落雷) c. まさつ帯電など各種の帯電 2)磁界 a. 地磁気 b. 磁石 c. 落雷による磁界
Q6.前問の電磁界について説明して下さい。 A6.まず,屋外の大気中には,常に大地に垂直な方向の電界が存在します。この電界は,「大気電 界」あるいは「大気電場」と呼ばれ,正極性(電界は地球に向かう方向)です。大気電界の値は, 大気の状態,場所,時刻によって大いに変わりますが,晴天時で80−180V/m,すなわち1 cmあたり約1V(ボルト)です。 雷雲の電圧は1億Vのオーダで,このため地上付近は通常の大気電界よりはるかに高い値になり ます。10〜20kV/mから最大で30kV/mにもなるので,晴天時より2〜3けた大きくな ります。山登りの際雷雲のため頭の毛が逆立って先端から火花の発生することがありますが,これ は,相当に危険な状況です。 正と負の電荷が,まさつなど色々な原因で分離すると帯電が起こり,その結果種々の静電気現象 が発生します。プラスチックの薄板をこすると紙片が吸い付けられる現象,冬の乾燥した日に,じ ゅうたんで帯電した後,ドアの把手に触れたときのショック,セータやシャツを脱ぐときのパチパ チという音,などです。じゅうたんによる帯電の電圧は,帯電防止がされていないと10kV(1 万V)にもなることがあります。 地球は一つの大きな磁石になっていて磁針が南北の方向を向くことで良く知られていますが,身 の周りに磁界(地磁気)が存在します。地磁気の原因は,地球内部の3,000度を越す高温領域 で鉄やニッケルが溶けた状態になっているコア(核)部分に流れる電流です。西向きに数10億A (アンペア)の大電流が循環していると考えられています。その結果,地磁気の大きさは赤道付近 では約300mG(ミリガウス)(1mGは0.1μT),北極や南極では約600mGです。日 本では,ほぼ北方向(わずかに西向き)で,約500mGです。また水平方向より下向きに約50 度(伏角)傾いた方向です。 雷雲には磁気はありませんが,雷の放電で電流が流れると磁界が発生します。落雷の電流は,数 10kA(数万A)から最大200kA(20万A)にも達しますが,その近くでは過渡的に大きな 磁界を生じます。